「やってよかった」と「人生が終わった」の間 — ETS手術の「その後」を生きる人たちの声
この記事は当事者の体験・感想と一般情報です。効果には個人差があり、内容は効果を保証するものではありません。症状がつらい場合は皮膚科などの医療機関にご相談ください。
ETSの論点整理記事で、この手術を「手汗のつらさと、予測できない別部位の汗を交換する取引」と書きました。今回はその続編です。論点の整理では見えてこない**「その後」の生活**を、実際に手術を受けた人たちの声から見ていきます。
毎日X上の多汗症の投稿を読んでいますが、ETSについて語る当事者の言葉は、他のどのテーマよりも重い。その重さごと伝えるために、この記事は要約ではなく、声そのものを公式埋め込みで紹介する形にしました。
はじめに: この記事の前提
- この記事はETSを勧めるものでも、止めるものでもありません
- 紹介するのは個人の体験・発信であり、医学的に検証された情報ではありません
- 声には偏りがあります。つらい思いをしている人ほど発信する傾向は割り引いて読む必要があります。だからこそ、後半には「やってよかった」という声も載せています
代償性発汗のある生活
ETS後の代償性発汗(手の汗が止まる代わりに背中・胸・お腹・太ももなど別部位の汗が増える現象)が、生活の中でどういう形をとるのか。当事者の描写がいちばん具体的です。
背中と腹にタオルを挟んで出社していた、という投稿
黒か紺の服・端の席・冷えた飲み物、という職場でのやり過ごし方の投稿
代償性発汗に加えて頭痛・倦怠感がつらいという投稿
汗染み対策の工夫は多汗症当事者なら誰でも知っています。ただ、ここで語られているのは手術を受けた「後」に、新しく必要になった工夫です。この一点が、ETSの話を特別に重くしています。
「防げると言われた」という訴え
くるとさん(@aoikazeets)は、手掌多汗症でETS手術を受け、代償性発汗などの後遺症について発信を続けている当事者です。術前には「防げる」という説明を受けていた、と書いています。
「人生が終わった」と直感した日、という投稿
くるとさんの発信には、消費者庁と国民生活センターが共同運営する「事故情報データバンク」に登録された、手掌多汗症手術に関する相談記録の画像もあります。
増え続けるETS手術健康被害、という投稿
このデータバンクは、全国の消費生活センター等に寄せられた生命・身体被害に関する相談・事故情報を集約して公開する公的なシステムで、誰でも検索できます。登録内容は相談された内容そのままであり、因果関係が公的に検証されたものではない、という性質は押さえておく必要があります。それでも、後遺症を訴える相談が公的な記録として積み上がっていること自体は事実です。
「元に戻す手術」を選んだ人もいる
さらにその先の選択をした人もいます。まるとんさん(X: @marumarutonton)は、ETS後の極度の代償性発汗に苦しみ、2002年にフィンランドで**リバーサル手術(遮断した交感神経の再建を試みる手術)**を受けたことを公表している当事者です。現在も鍼治療でリハビリ中とのことで、「まるとんのブログ」では、その後の身体の変化や治療の記録が、20年以上たったいまも日記として更新され続けています。
多汗症の情報を探し始めた人が最初にたどり着く場所ではないかもしれません。でも「ETSの後」を考えるうえで、これほど長期の一次記録はほかにないと思います。
それでも「やってよかった」という人もいる
一方で、代償性発汗が出てもなお手術に満足している、という声も確かにあります。
代償性発汗になってもなお「あの時手術して良かった」と思えた、という投稿
幼少期からの手汗の苦しみと、術後の代償性発汗。どちらを重く感じるかは、症状の程度にも、部位にも、その人の人生にもよります。同じ手術を受けて、評価がここまで真逆に割れる — これがETSという治療の本質だと、声を並べてみてあらためて思います。
これから迷う人たちへ
いままさに迷っている人、治療の途中でETSが視野に入ってきた人の声もあります。
ETSは最終手段だと思っている、という投稿
塗り薬・飲み薬が対症療法だと知りショックだった、という投稿
判断材料として、一次情報も置いておきます。日本皮膚科学会の原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版では、交感神経遮断術は重症で、ほかの治療で効果がなく、患者本人の強い希望がある場合の選択肢と位置づけられています。また、代償性発汗を完全に防ぐ確立された方法はないとされ、十分なインフォームドコンセントの必要性が強調されています。「防げます」という説明に出会ったら、この記述と突き合わせてみてください。
検討時に確認すべき具体的なポイントは論点整理記事のチェックリストにまとめています。
まとめ
後遺症に苦しむ人。訴え続ける人。元に戻す手術を選んだ人。それでも感謝している人。迷っている人。どの声も本物です。
だからこの記事の結論は「受けるな」でも「受けろ」でもなく、こうなります。決める前に、両方の声と一次情報を見てほしい。SNSで目に入った1つの声だけで決めるには、この手術は重すぎます。